あ~イク恋愛生欲情の扉

あ~イク恋愛生欲情の扉

札幌市中央区南5条西5丁目 第2東亜すすきのビル8F | 営業時間:8:30〜23:59

お電話で「スポット見た!」とお伝えください!!

011-563-6919

宝乃ありな の写メ日記PHOTO DIARY 宝乃ありなのプライベートを覗き見! 随時更新中!

2024年 4月 の写メ日記一覧
宝乃ありな

宝乃ありな(26歳)

T160.B90(G).W58.H87

せつなく ゆがむ おじかん です

せつなく ゆがむ おじかん です

こんな女になるとは思わなかった。
そのあたりでマサコは手をうとうとした。
よい落としどころだった。
仕方ないというムードがある。
自分のせいにも他人のせいにもならない。
星回りとか趨勢とか諸般の事情はなしにして、ただ、こんな女に仕上がったと、そういうことにマサコはしたかった。
そう考えて、胴回りをちょっと気にした。
シニックをやるには肉が付きすぎている。
丸顔だし、と思いながら、頬をつまむ。
頭頂部肉が手をやり、
「鉢、ひらいてるし」
と、ひとりごとをつぶやいてみたら、失笑が漏れた。
お腹の底から、なにかが喉まで駆け上がってくる。
さむざむしさとでもいいたいような、実体のないものだった。
そもそもシニックの柄じゃないと独白する。
こんなもっさりしたシニックがいるってか。
苦笑いにせよ、失笑にせよ、笑う対象は自分自身だ。
いまごろ、みんなが笑っているだろう。
マサコは細道を歩いていた。
コーポの少し手前でタクシーをおりた。
午前0時を回っている。
今は忘年会の帰りである。
十二月二十一日。
マサコは、あれこれと考えて、自、殺したい気分になっている真っ最中である。
忘年会のひとり反省会と言ってもいい。
今日、もっとも痛かったのが、課長の軽いセクハラに乗ってしまったことである。
酔っ払って悪のりしながら、チューしていい?と迫ってくる課長に、
「また(股)にしてね」
と、くだらないダジャレで切り返したシーンを思い起こせば、顔が熱くなる。
適当にあしらう台詞なら、いくらでもあるはずなのに、よりによって、下ネタで返すとは、どういうことだろう。
なのに言った途端に、自分で自分に吹き出してしまったのだ。
うまい冗談を口にしたと思い込んだし、課長と当意即妙野やりとりをしているつもりでいた。
大人な対応が出来たとすら、思ってしまったのだ。
なんていうか、
そのときの自分は、まるで忘年会をエンジョイしているようで、それしか楽しみがないようで、
糖尿の気がある絵に描いたようなおっさんの課長に「チューしていい?」と聞かれたら嬉しくってたまらなかったように思われたかもしれない。
課長は、真っ赤に膨らんだ顔で、ニタニタしていたし、マサコだって、相当顔を赤くして、おばさんくさい声で、けたたましく笑ってしまった。
そのときの途方に暮れたような周囲の冷ややかな雰囲気に、もちろんマサコは気付いていた。
それでも、ばか笑いを止めることが出来なかった。
止めるキッカケを失い、おばさんくさい笑い声を長く伸ばすことしか出来なかった。
以前そんなとき、
「マサコさんが壊れた」とか「マサコさんどうしちゃったんですか」とか、囃し立てられていたのに、誰も声をかけてくれなかった。
いまにして思えば、囃し立てられているうちが華だったのだ。
どうしちゃったんですかと半笑いで困惑されている時代を経て、気の毒そうに見守られるようになった。
そんなことを思い出して、鬱々とした気分で、
「早かったなあ」、と、唇を動かした。
「さんじゅうはっさい」、と、まるでスイカの種を飛ばすように、口から吐き出してみた。
えいえんの、おとめざ、なのに、さんじゅうはっさい、どくしん。
死にたい。
自分がそんな歳になるなんて思わなかった。
真夜中の空を仰いだら、せつなくなった。
ふるさとの両親に手紙を書きたい気分になった。
こんな女になるとは思わなかった。
ほんとうに、思っていなかった。
内階段を三階までのぼっていった。
鍵穴に鍵をさしこみ、ドアを開ける。
よごれたコンバースが目に入った。
小動物ならお産を出来そうなほど大きな靴のサイズは二十八センチ。
廊下からホップ、ステップ、ジャンプで部屋に上がったような狭い玄関に脱ぎ散らかされている。
よっこいしょと、かがみこみ、マサコはよごれたコンバースを揃えた。
あっ、今日は早番だったのかと思いながら、首を伸ばして、部屋の中を覗いた。
彼氏の太足が見える。
素足である。
膝下しか見えないけど、腹這いになっている模様だ。
皮を、むしったあとのある踵を、ハロゲンヒーターで、あぶっている。
んもうっ。
可愛い足だわ。
早く、におい嗅ぎたい!
だいすき、破壊したい、食べちゃいたい。
マサコは、ほんのすこし癒されて、かすかな笑みを頬に浮かべて、ロングブーツを引っこ抜くようにして脱いで、コートも脱いで、通販で購入したポールハンガーに掛けた。
部屋に入りら彼を見下ろす。
カーペットに長まっている彼は、しみじみと巨大である。
彼は、なんとなく、雰囲気が、熊のぬいぐるみっぽい。
縦はともかく、厚みもある。
決して肥満体ではない。
いわゆる、がたいがいいという、からだつきをしている。
たまにジョギングすることがある。
ねずみ色のパーカーのフードを目深にかぶり、出かける前からロッキーになりきるような、そんな男である。
「おかえり、マサコちゃん」
上半身をねじって、彼氏がそう言った。
ちょっと顎をひいて、マサコの全身を眺め、「今日のマサコちゃん素敵だね」と続けてくれた。
「どこが?」
「いや、その、全体的に?」
ふん。マサコは鼻を鳴らした。
彼氏にファッションのなんたるかなど分かるわけがない。
そりゃ私だって流行に通じているわけじゃあないけど。
カーテンを引くふりをして、自分の姿を窓ガラスで確認した。
「やっぱり若作りしすぎだよね」
フリルなんてさ。
振り向いて、手をブラブラさせる。
彼氏にカフスを見せつけるようにした。
「スカートの下にズボンはいたりとか」
パンツの生地をつまんで見せた。
「それも、こーんな、ももひきみたいに細いやつだ。
痛いったら、ないよ」
そう言いながら肩をすくめる。
心のどこかで、そんな自分の仕草を可愛いと思っているし、可愛いと言ってほしい。
彼氏にだけは。
「どうして?すてきじゃん」
彼氏は太い首をひねり、すてきだと思うけどなあと言いながらも、さして興味無さそうに元の位置に戻ってしまった。
おい。
もっと、こっちを見ろ。
「それに、このネックレスだよ?」
マサコは彼氏の頭のそばに膝をついて、ペンダントトップを押し付けるようにして見せた。
金色で縁取られた楕円形。
お気に入りのエメラルド。
みどり色で、つるりとしているから、まりもようかんみたいな見た目である。
「マサコちゃんの大事にしているやつだね」
おもてを上げた彼氏の豆粒みたいな目と、いきあうと、うん、としか言いようがないような気がする。
彼氏はアゴヒゲを、しっかりと、たくわえているけど、
ワイルドには見えなくて、ときどき、赤子のように見える。
それは少年のような、という意味ではない。
むしろ、じいさんに近い。
一遍、歳をとってから童に戻ったような感じと説明したら、わかりやすいだろうか。
マサコより二歳年上だから、四十才である。
じいさんと表現するには、まだ早い。
それに童に戻ったじいさんなら、言葉の端々に人生の道のりめいたものを匂わせるんだろうけど、彼氏にはそれがない。
襞も折り返しもない笑顔を四角い顔いっぱいに広げて機嫌よくしている。
彼氏の硬い癖毛を触りながら、マサコは、細道を歩いて帰って来たことを話した。
メーターが上がる前にタクシーをおりた話をした。
「だめだよ、マサコちゃん。
夜道のひとり歩きは危険だよ」
そう怒られて、
うれしくてうれしくて、
「だーいじょうぶだって」
と豪快に笑って見せた。
「とられて、困るものなんてないし」
と言いながら、彼氏のことを、ちらりと見る。
でも、と言われるのを期待している。
もっと心配してほしい。
もっと女として扱ってほしい。
たかだか忘年会にでもつけていきたいエメラルドのネックレスのように、マサコにも価値があると思いたい。
でも、大事だから、大事に思っているから、みたいな、なんか、そういう、言うより言われたほうが気恥ずかしくてならないような甘い文句を彼氏の口から聞き出して、
なーにいってんの!と、しかめっ面をしてみたい。
だけど彼氏は、今度から気をつけてねで会話を終了させてしまった。
そんな彼氏のことが可愛くて、
あまりにも可愛くて、
殺、そうかなと思った。
心中しようかなと思った。
もう、なんで、そんなに、ぬいぐるみみたいなの。
かわいい。にくい。む、かつく。だいすき。破壊したい。
彼氏の、モジャモジャ頭を、マサコは軽くはたいた。
なんだよう、という彼氏に、酒くさい唇でキスした。
下着だけを脱いで、彼の顔に、またがった。
ぬるぬるとした彼の舌が、マサコの一番感じる場所を包み込んだ。
そのときの、せ、っくすで、マサコは妊、娠をした。
彼氏は逃げ腰になった。
だから、殺、した。
「今回は諦めよう」
と彼は言った。
今回は諦めよう?
え、わたし、さんじゅうはっさいなんですけど?
いま生まなくて、いつ生ませてくれるの?
ねえ。
いつ結婚してくれんの?
ねえ。
あんたの子供、三回も、○ろしたんですけど。
それなのに、
またにしてね、ってか?
またにしてねってか。
そうか。
そうなのか。
彼氏を包丁で殺、したあと、マサコは狭い手洗い場にいる。
あいしてる。
声に出さずに、ひとりごちた。
こんな女になるとは思わなかった。

一覧に戻る
スポットナビ
スポットナビ