あ~イク恋愛生欲情の扉

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2024年 5月 の写メ日記一覧
宝乃ありな

宝乃ありな(26歳)

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ゆがむ おじかん です

ゆがむ おじかん です

むぎこが、いもこに、こんな話を聞かせてくれました。
むぎこは、赤ん坊のとき、ベビーブルーのおくるみにくるまれて、小さな籠に仰向けに寝かされて、山の麓の貧しい村の、お地蔵様の足に捨てられていたらしいのです。
「へー」
いもこは興味深そうに、
ゆっくりと、まばたきをしながら、むぎこの話の続きを求めました。
むぎこの最初の記憶は、曇り空と枯れた木の枝、それに飛んでいく大きなカラスの姿だったらしいです。
台所でジャガイモの皮を剥きながら、むぎこは、それを得意気に語りました。
むぎこの華奢な手が、するすると包丁を動かしています。
「どうして、すてられちゃったの」
いもこが、そう訊いてみると、
むぎこは、打てば響くように、
「わたしは、醜かったから」
と答えました。
「むぎこ、めちゃくちゃ美人だよ」
と素直な気持ちで言ってみると
「赤ん坊のときはブスだったから、
拾ってくれた両親が整形させてくれたの」
と、むぎこが言いました。
テーブルにはニンジンとタマネギが、既にざく切りにされています。
むぎこは醜くて捨てられたあと、漁師の夫婦に拾われました。
旦那さんはサンマにそっくりで、おかみさんのほうはカレイにそっくりで、とても美味しそうな夫婦だったらしいです。
二人とも心根は優しかったのですが、なにしろとことん貧乏だったので、むぎこは毎朝、はだしで魚の行商に行かされました。
天秤棒のせいで、肩はいつも青黒く腫れていたといいます。
「まって」
いもこは、むぎこの話を遮りました。
そして
「山の麓の村に漁師っているの?!」
と聞いてみると、
むぎこは「山の麓には、海もあるのよ」と言いました。
「両親、そんだけ貧乏なのに、むぎこのことを整形させるお金はあったの?」
と聞くと
「あまりの醜さに村人たちがお金を出してくれた」
らしいのです。
もちろん、むぎこの話が本当ではないことを、いもこは理解しています。
実際の、むぎこは、とてもお嬢様です。
父親は社長、母親は看護師で経済的に苦労などしていません。
なぜ知っているのかって、いもこと、むぎこは幼なじみだからです。
捨てられたり、はだしで魚の行商に出されたりしたことなどありません。
一人っ子だったこともあり、それはそれは甘やかされて育ったお嬢様です。
きわだって孤独で、きわだって美しく、
そして、こういうふうにバレバレな嘘をつく女の子です。
ひどい嘘つきというよりは、周りを楽しませようとして、そんなことばかり話してくる、意味不明な優しさと醜さをもっている女の子です。
悪意のある嘘はつかないので、いもこは、むぎこのことを不快には思いません。
むぎこは、どこか不幸な設定に憧れているのです。
幼稚園でも小学校でも中学校でも高校でも、むぎこはみんなに嘘つきと言われていました。
むぎこは、母親が作ってくれた豪華な弁当をゴミ箱に、そっと捨てたあとに、
「私は、親から、お弁当もつくってもらえない」
とか、わけのわからない嘘をついたり、
自分のバッグをハサミでビリビリに切り刻んで、
「誰かに意地悪された」
などと意味不明な嘘をつくことがありました。
それが嘘だと誰もが気付いていました。
お洋服を買ってもらえないといいながら、むぎこは、いつも、かわいい服を着ていました。
むぎこは、自慢したいわけではなく、
むしろ不幸な設定に憧れていて、
それを演じているだけなのに、
周りから見たら当然、
「そんだけ恵まれていて、なんでわけのわからない嘘つくの?
イヤミ?」
と思われてしまいます。
こうして、むぎこは、不幸に憧れすぎて、ハタチの頃、母親のことを殺、してしまいました。
お望み通りの転落人生がまっていて、むぎこは、昔も今も、とても孤独な女の子です。
むぎこが出所してから、
偶然に再会した私たちは、いつしか一緒に暮らすようになりました。
私たちは家の中に、シャンデリアをつけたり、
ピンクや青のダリアの花がたくさん書かれている壁紙をつけたりして、模様替えをしました。
まるで発狂した画家のアトリエみたいな家の中で、
いもこと、むぎこは、幸せに暮らしています。
発狂しそうなくらい美しい、この家の中で、
むぎこは、さみしそうな表情で
「ねぇ、いもこ、人なんて、元々ほんとうじゃないのよ」
と、つぶやきました。
むぎこがつぶやいた、その言葉がどういうことなのか、いもこの語彙力では説明出来ないけど、
むぎこは、人を信用していない。
たしかなのは、そのことだけです。
台所はあたたかく、お肉を炒めるいい匂いがしています。
手慣れた感じでフライパンを揺する、むぎこの後ろ姿は、ちょっと、はすっぱです。
「人がほんとうじゃないなら、なにがほんとうなのかしら」
と、聞いてみたことがあります。
すると、むぎこは、あっさりと微笑んで「物語よ」と答えました。
そして、こう続けました。
「それがぐるぐるまわっていてね、人なんて、それを運んでいるだけなのよ」
むぎこは、嘘を物語と呼びます。
「ねぇ、むぎこは、母親を殺、したこと後悔している?」
と聞くと、
むぎこは、あっさりと首を横にふります。
「だって、それが、あの人が望んでいたことだから。
人の不幸って面白いでしょう。
人が不幸だと、自分が優位に立てるから。
だから私が不幸になって、周りを喜ばせてあげる」
なんだか、むぎこは、とても難しい話をしている気がして、いもこは、錯乱してポーカーフェイスを装いました。
むぎこはとても孤独です。
そしてとても人間不信です。
そしてとても心が綺麗な女の子です。
それは時として、狂気にもなってしまう。
冬の空とおなじくらい、もしくはプラスチックのコップとおなじくらい、むぎこは孤独です。
「綺麗な髪の毛ね」
と言いながら、
むぎこが、いもこの髪の毛を撫でました。
いもこはクスッと微笑みながら、むぎこの唇にキスをしてみました。
むぎこは、特に驚くこともなく、
やっぱり、あっさりと、舌を絡めてくれました。

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