あ~イク恋愛生欲情の扉

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宝乃ありな の写メ日記PHOTO DIARY 宝乃ありなのプライベートを覗き見! 随時更新中!

2024年 4月 の写メ日記一覧
宝乃ありな

宝乃ありな(26歳)

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ゆがむ おじかん です

ゆがむ おじかん です

私は38歳になっている。
彼のマンションに行くと、いつも私はハッとした。
いつも、ドアを開けて中に足を踏み入れる瞬間に漂う、他人の匂いにハッとした。
彼が他人であり、彼には彼の生活があって、彼には彼の家がある。
いつもその当然の事に驚きと感動を覚えた。
近ければ近いほどにいい。
近ければ近いほどいとおしい。
近ければ近いほどに愛し合える。
20代半ばぐらいまでは、そう思っていた気がする。
でも今はそう思わない。
彼と一緒に暮らしたいとは思わなかった。
そして、
私はなぜだか彼にたいして、性的な魅力を感じない。
だから、彼と、せ、っくすをしたことがない。
男の独り暮らし特有の無機質さが、玄関にまで漂う。
廊下に雑誌が積んであったり、
それでもバスルームの三面鏡のあたりには妙に整頓されていて、そこにはコンビニで売っているような安っぽい整髪料や歯みがき粉や髭剃りのクリームが並んでいて、棚には何本も同じカミソリが買いだめされていて、そして一本だけ香水が置いてあった。
何でかわからないけれど、彼の部屋にあるもの全てが私のツボだった。
本当に
彼という男には無駄なものが何もなくて、全てが必然的に、必要なものだけが彼の周りに引き寄せられているかのようだった。
私は彼の前で普通に着替えるので、
彼は私の裸は見たことはある。
でも、せ、っくすはしたことがない。
なんとなく
そんな気分になれない私の気持ちを察して、
彼もそんな気分にならないように我慢してくれてたと思う。
私は彼のTシャツを勝手に着る。
袖を通すとダブダブである。
ふざけた会話をしながらケタケタと笑いあった。
笑いの余韻の中でニコニコしながら二人同時にタバコに火をつけて、やっと笑いが収まって二人とも呼吸が落ち着いた時、ベッドの上に並んで壁に背をつけながら座り、お互いがお互いにもたれかかった。
 
彼がふいに私の名前を呼ぶ。
私はきょとんとした顔で彼の顔を見る。
私は
彼にたいして、偽名を使っていた。
理由、なんとなく。
「なんで私の名前知ってるの」
「逆に聞くけど、なんで偽名使ってたの」
「えっ、なんとなく」
「俺のこと好きなの?」
「好きだから付き合ってるじゃん」
「付き合ってるの?」
「うん、だから、こうして、あなたの家にきてるじゃん」
「付き合ってるなら、なんで偽名使ったの?」
「なんとなく」
彼が笑いだしたので、
私も面白くなって、つられて笑う。
私たちの笑いのツボはおかしい。
「おれ、なんにも、ありこのこと知らないよ」
「知らなくちゃ、恋って出来ないのかな」
「ありこは同棲したことある?」
「あるよ、そりゃー、もう、おばさんだもん。
20代前半の時ね」
「どうだった?」
「どうもしないよ」
「他には?どんな思い出があるの?」
「あんまり、ないよ。
そんなに語れるほどの経験は少ない」
「ありこは、処女なの?」
「そんなわけなくない?
同棲までしてた女が、そんなわけなくない?」
「だよね」
彼が
寂しそうな顔で笑いだしたので
私も笑う。
なんで、そんなこと聞くんだろう。
遠回しにやりたいと言われてる気分になり、不愉快になる。
「ありこはバツイチなの?」
「なんで?
さっきから、なんなの?
処女なの?って聞いてみたり、バツイチなの?って聞いてみたり、何その一貫性のない質問。
私のことピュアだと思ってるのか、
私のことビッチだと思ってるのか、よくわかんない一貫性のない質問」
「どっちにも見えるから」
「どうゆうこと?」
「ピュアにも見えるし
そうじゃないようにも見えるから。
わかんない。
読めない」
「あー、なるほど」
「で、バツイチなの?」
「あー、うん」
彼は
自分で聞いたくせに
私がそれを認めると
とても
嫌そうな表情をした。
私は、ふいに過去を思い出す。
そして
次第に胸の鼓動が激しくなり、どんどん吐き気がこみあげる。
「シュン、シュンちゃん、ねぇシュン」
あの頃、
我が子の名前を、何度呼んだことだろう。
何度名前を呼び、何度抱き上げ、何度抱きしめ、何度この子がいなければ死んでしまうと思っただろう。
私の息子は
交通事故で死んだ。
いなくなった今も、私はこうして生きていて、彼氏を作っている。
神々しいまでの美しさを備えた我が子を失い、
それによって会話がなくなり、どんどん距離が出来た旦那と離婚した。
美しい息子と 
初めて見たときから一秒も休むことなく愛した男、ふたりとも失った。
それからというもの、
男と付き合っても偽名を使い、ずっとひとりで生きてきた。
誰も、私の名前を呼ばないでほしい。
誰も、私のことを呼ばないでほしい。
あの美しい人達以外。
誰かがいなければ生きていけない人間ではなくなり、
誰もいなくていい人間であると同時に、誰にとってもいなくていい存在となり、
それが心地よくなった。
私の乳を生きる糧にして、
私がいなければ死んでしまう存在だった赤ん坊は、私の乳ですくすくと育ち、ごはんを食べるようになり、喋り、ヤンチャに走り回るようになった頃に、呼吸を止めて、ただの肉のかたまりになった。
私は
息子のことを諦めきれずに気が狂い、
旦那は
気が狂った私のことを諦めた。
私は
それまでの自分を諦めた。
全てを失ったところからしか、私は新しく何かを始める事が出来なかった。
全てを失ったところから、私は一歩も前進しない。
だから私は、今の彼氏を失っても、
これから先の彼氏を失っても、何も失わないし、何も変わらない。
私は常に私を更新し、日めくりカレンダーのように私という表層を剥がし続けていくだけで、川のように流れていく。
あれから私は何も失わない。
ただ変化していくだけである。
へその緒を切った時の記憶が甦る。
私が育み、私が産み出した私を、私は自分の手で独立させた。
そうして他人となった私を失い、私は初めてまっさらな状態に戻った。
自分との境界線すら、時々見失うほど自分自身に近かった存在と、自分との境界線を消したいと願った存在、本当にいとおしく、片時も離したくなかった。
私のシュンちゃん、あやしながら何度も繰り返した狂気じみた言葉は、今なお私の頭にこだまする。
場面は切り替わり、
私と彼氏は別れた。
同棲したいという話をしてくるようになり、
それと同時に、やりたいアピールが、しつこくなってきたからである。
要求が多くなり、
感情が出やすくなった彼氏に嫌気がさした。
「それが、あなたの素なら、こころ開かなくていいよ。
わたしは、優しいあなただけが好き」
と言ってみると、
彼氏は、とても、ショックをうけた表情をした。
男だから仕方ないのかもしれない。
彼氏に「私のことを、性的な目で見ないで」と言うのは、
し、ねと言ってるのと同じようなもんである。
だけど、
どうか、
クリーンになった私の体を汚さないでほしい。
邪魔しないでほしい。
でも、
それは、ただのキッカケだったのではないかと思う。
彼氏の健康的な性欲が引き金になっただけで、
彼氏が
私のことを性的な目で見ないとしても、
私は
彼氏と別れていたような気がする。
場面は切り替わり、
私は
赤いパンプスを買いに行った。
試着してると
ちょっと大きい。
店員さんが
「もうワンサイズ小さいの持ってきますね」
と言いながら奥に消えた。
ふいに鏡を見ると、
元旦那にそっくりな人が
ベビーカーを押しているのが見えた。
私は鏡越しで
それを凝視する。
そのベビーカーの中には私の失った、いちばん大切な私が入っていたはずである。
そして、
鏡から、
その親子は姿を消して、
次は、
彼氏にそっくりな男が、たまたま通りかかり、鏡に映り、また姿を消していく。
私の男たちは、みな、消えていく。
そして、私の足にピッタリなサイズの赤いパンプスが、もうすぐ来る。
の 今日の夢シリーズ2

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