あ~イク恋愛生欲情の扉

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2024年 4月 の写メ日記一覧
宝乃ありな

宝乃ありな(26歳)

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ゆがむ おじかん です

ゆがむ おじかん です

マユコは子犬を助けてみたかった。
出来れば雨の日がよかった。
道端に捨て置かれた段ボールのなかで、心細そうに震える子犬に優しくしてみたかった。
いいこだと思われたかった。
性格のいい自分を演じてみたかった。
だけど
なかなか子犬を捨ててくれる人はいない。
隣の家の犬が子犬を生んだ。
生んだ四匹のうち三匹は、よそにもらわれていった。
そして子犬が残った。
その子犬はチビと名付けられ、ぼろ毛布も与えられ、機嫌よく幸せそうに過ごしていた。
夕方、マユコはカッパを着こんで、隣の庭に忍び込んだ。
赤い屋根の犬小屋を覗きこむと、眠っていた子犬が起きた。
子犬には、まだ鎖がついていなかった。
子犬は暖かくて、意外に重たかった。
なまなましい重さだ。
毛の生えた肉、という感じがする。
子犬を抱えて自宅の物置まで駆けて行った。
準備していた深めの段ボール箱に子犬をいれる。
蓋をしめ、よいしょ、と持ち上げた。
そして約50分、歩いた。
そして、よい具合の好みの小路に段ボール箱を置く。
マユコにとっての、よい小路とは車一台通るのがやっとの場所である。
このシチュエーションをマユコは求めていた。
段ボール箱の蓋を開けて、その場を離れた。
活発な子犬は箱から出ようとした。
出られては困るので、蓋を閉めた。
そして、いったん自宅に帰り、カッパを脱いで、赤い傘をさして、また50分かけて戻ってきた。
段ボール箱にそっと近づき、蓋を開ける。
傘を肩と首で挟み、しゃがみこんだ。
子犬の頭をゆっくり撫でる。
子犬は寒いらしく震えている。
マユコは女優になりきって言う。
「可哀想に。だれがこんなひどいことを?」
感情をこめていい、赤い傘を子犬にさした。
子犬を抱き上げ、高い高いをした。
傘を差しながら子犬を抱っこして歩くのは難しいけど、どうにかやりきった。
そうやって、子犬と一緒に家に帰った。
すっかり満たされたので、
子犬を返そうと再度、隣の庭に忍び込む。
おばさんが留守の時間を狙ったから、
だからおばさんと出くわした時は驚いた。
耳鳴りがしたほどだ。
そのあとに汗が出てきた。
掴みかかってくる勢いで、マユコの腕から子犬をかっさらったおばさんを見て、
興奮が伝染した。
気がついたら、
意思とは裏腹にマユコは、
おばさん、おばさん、と必死で言っている。
自分の声なのに、どこか遠くで聞こえた気がした。
子供らしい、正直で、必死な声。
「その子犬、捨てられてたんだよ」
と言いながら、マユコの目から涙が溢れた。
嘘泣きではない。
マユコは本気だった。
本気で心ない誰かに連れ去られ、捨てられた子犬を助けた少女になりきっていた。
結果的に隣の家でマユコは恩人になったし、いい評判が瞬く間に町内に広まった。
命の恩人とほめられるたびに、
マユコは大いにはにかんだ。
マユコは愛らしい顔立ちをしている。
目がパッチリしていて、鼻の形も唇の厚さも申し分なかった。
白い肌は柔らかで、栗色の髪の毛を腰まで伸ばしていた。
とても可愛くて、性格までいい。
そう。
マユコは、これを求めていた。
とても快感である。
べつに犬なんて好きでもなんでもないし、苦手なのに。
マユコの欲を満たすためだけに使ったのに。
言えない言えない。
ところが。
「ぼく、見たんだけど」
という者が現れた。
同級生のモリオだった。
下校中に声をかけられ、振り返った直後だった。
顔と名前くらいは知っている。
トクトクとマユコの心臓がいやに可愛らしい音を立て始める。
とっておきといってもいいほどの笑顔を造り、マユコは口を開いた。
「なにを?」
「全部」
モリオはにっこりと笑った。
モリオはジャガイモに似ている。
モリオの肉付きのよい丸顔は、笑うといっそう無邪気に見える。
そして邪悪に見える。
場面は切り替わり、
モリオが本腰を入れて、マユコにつきまとい始めた。
マユコの部屋は二階にある。
朝、カーテンを開けたら、モリオはマユコの自転車のサドルに頬擦りをしていた。
ピンク色のサドルをかき抱くようにして、うっとりと目を閉じている。
気味の悪さを感じた。
でも、何か、しっくりくるものがあり、
恐怖は感じなかった。
モリオはマユコの一日の行動を細かく書いたレポートみたいなメールを送りつけてくるようになった。
中学生になり、モリオは、背が伸びた。
手足が長くなり、小太りではなくなった。
ジャガイモではなくなった。
勉強もよくできた。
もしもモリオが健全な男子だったら、わたしたちは似合いのカップルになれたのになと思った。
しかしモリオは、マユコにつきまとうわりに、マユコに何も求めてこなかったし、
つきまとわれている立場のマユコから切り出すのもおかしな話だし、
モリオが何をしたいのか意味不明だった。
マユコのなかの気味の悪さは回転を続けていた。
だけどモリオのやっていることは変態的だけども、よその家の子犬をさらって、捨てて、また拾ったマユコの行為と、同質のものを感じる。
場面は切り替わり、
高校生になった。
モリオが毎日、マユコの写メを要求する。
できれば毎日と言われたけど断った。
マユコはモリオの執着が本物なのか知りたかった。
マユコは、モテなくなった。
あんなに可愛かったのに、
成長と共に変化が出てきた。
マユコの輪廓は四角に育った。
わりと大きい。
華奢だった身体も、
デブとは違うけど骨太になり、ごつい女になった。
町内の人には、
昔はあんなに可愛かったのに、と、残念がられてるのを知っている。
マユコは自分から異性に接近するようになった。
マユコはまだ自分が「美味しいもの」なのか確かめたかった。
どんな男にも求められれば応じた。
何度でも応じた。
おかわりが欲しくなるくらい、私ってば美味しいものなのね
と思いたかった。
おかげで
あだ名は「ヤ、リマン」になった。
モリオからは相変わらず毎日メールがくる。
 
私にはモリオがいる。
せ、っくすをしなくても、
私を美味しいものだとわかっているモリオがいる。
 
私は、
化粧なんかしなくていい。
眉も整えなくていい。
顔の産毛も剃らなくていい。
すねも脇も下もボーボーだ。
風呂なんて入らなくても死にはしない。
ガムを噛めば歯磨きも省略できる。 
いつしか、
誰もマユコに近づいてこなくなった。
モリオは忙しいらしく、
あまりメールをしてこない。
場面は切り替わり、
玄関のチャイムが鳴った。
土曜の午後だった。
マユコは聞こえないふりを決め込んだ。
まだ布団の中にいた。
しつこく鳴らされるチャイムに根負けしてドアを開けたら、モリオが立っていた。
上等そうな黒い靴をはいて、体にあったスーツを着ており、水色のワイシャツにネクタイを締めていた。
「お久しぶりです」
そう言ってくる。
「直接お会いして言った方がいいかと思って」
とマユコの全身に視線を走らせる。
モリオが控えめに鼻をこすった。
いやな臭いを嗅いだときに、やる仕草に見える。
「はっきり言った方がいい気がして」
振りきるようにモリオが言った。
なんだろう。
プロポーズだろうか。
勘弁してよ。
モリオなんて、嫌だわ。
「はっきり?なに?」
マユコは、うつむいて、目やにを取ろうとしている。
フケがボロボロと落ちる。
「もう、やめません?
というより、やめてもらえませんか?」
苛立っている様子だ。
「は?なにが」
マユコも寝起きで苛立ちながら答える。
目やにが付着した指をさりげなくジャージで拭いた。
「メール」
「は?
あなたこそ勝手に部屋に入るのやめてくんない」
「ほんとに、そろそろ、まともになりましょうよ」
「だって、現に、掃除洗濯してくれたりしてるでしょ」
「それ、僕じゃないですよ。
どうやって家に侵入するんですか。
親が来てくれたんじゃないですか?
まともな人なら、そう考えると思いますが」
「まとも?
まとも?
あんたが、まとも?
あんたなら、やりかねない」
「子供の頃の話じゃないですか。
いつまで、自分に惚れてると思ってるんですか」
まともな人なら、変わっていくと思うんですけど。
モリオは、そう言って、肩をすくめた。
まるで常識人みたいな仕草である。
目の奥が熱くなった。
裏切られた、という思いもある。
マユコは裸足のまま、玄関におりた。
モリオの肩に手をおいて、首筋に鼻先をくっつけた。
もう片方の手で、モリオの太ももを撫でる。
そしてモリオの耳たぶを噛んだ。
モリオは首を引っ込めたあと、マユコの頭を手のひらで押し戻した。
しなだれかかっていたマユコの身体も荒っぽく引き剥がす。
「勘弁してくださいよ」
細い指で眼鏡をかけ直して、顎を引いて、こちらを見る。
眉間にシワを入れたまま、薄い唇を歪めている。
「別人じゃないですか、というより、別物だ。
子犬を助けたあの可愛い女の子じゃないですよね。
あのとき天使か何かを見つけたような気持ちになりましたよ。
でも、とんでもない高飛車で、
どこまでいい気になっていくのか興味がわいて、結局ここまで引っ張っちゃったけど」
どうやらモリオは
その場面しか見ていなくて、
マユコが犬を盗んだことまでは見てなかったらしい。
マユコの全てを見ていたわけではないのだ。
マユコの全てを好きだったわけではないのだ。
マユコのことを、無条件で、おいしいものだと思ってたわけではない。
場面は切り替わり、
マユコはモリオの会社周辺に
「モリオは変態」
とか
「モリオはワイセツ野郎」
と太字で書いた張り紙を張りまくり、逮捕された。
だけど、すぐ出てきた。
そしてモリオの会社に火をつける。
モリオは悪くない。
モリオを変えたのは、きっと世の中だ。
会社だ。
上司だ。
こんな会社燃やしてあげるからね。
あなたがあなたのままでいれるように。
あなたが安心して、私のことを、愛せるように。
の いつかの夢シリーズ

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