あ~イク恋愛生欲情の扉

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2024年 4月 の写メ日記一覧
宝乃ありな

宝乃ありな(26歳)

T160.B90(G).W58.H87

ゆがむ おじかん です

ゆがむ おじかん です

お葬式というのは、どうして夏ばかりなんだろう。
叔父も祖母も、夏に死んだ。
近所でお葬式があるのもきまって夏だったような気がする。
そして今日は、やっぱり夏だった。
暑い一日だった。
僕は畳に横になる。
あけ放たれた障子から庭が見える。
たっぷりと垂れる緑、父の自慢の苔生した石。
妹は、ずいぶんと白い綺麗な煙になって、晴れた空にのぼっていった。
高い煙突からほっそりと女性的なしぐさで、たなびきながら、妹はいかにも気持ち良さそうに、愉快げに笑っていた。
襖の向こうで、親戚がみんなお茶を飲んでいる。
ときどき太い咳払いや女の人の涙声が聞こえる。
遠慮しいしい歩く人の足音や、これみよがしに、どしんどしん歩く人の足音。
そのたびに畳がきしむ。
もしもいま、襖があいて、僕がここでこんな風に、こんな格好でだらしなく横になっているのが見つかったら、きっと父は顔を上気させ、すじを立てて怒るだろう。
そんなことを考えながら、僕は、しずかな部屋に仰向けになり、自分の体をもてあます。
お葬式から帰ると、母は、父と僕に塩をまいた。
母のその、さばさばした小気味のいい手つきが、僕は、すきだ。
娘を失って憔悴しているのが目に見えてわかるけど、仕草は、てきぱき、さばさばとしている。
母が喪服を脱いだ。
しゅるりと帯をとく音とか、襦袢のたてる涼し気な音が、僕の胸を締め付けた。
そのとき、やっと僕は、妹が死んだことを、こころから実感して、どっと悲しみが襲ってきた。
初めてのお葬式は、祖母のそれだった。
妹が小学校に入学したばかりの夏だったので、もう、十年前くらい、かなり昔のことだ。
もともと小柄だった祖母は棺の中で、ますます小さく縮こまり、少しマヌケな、穏やかな顔で花に埋もれていた。
口元がいつもと違うと思った。
死んだから違うのだろうと思った。
僕も妹も、そのとき、死んだ人を見るのは初めてだったけど、ちっとも怖くなかった。
なにもかも、とても自然だった。
人が死ぬということが、どういうことなのか、誰から教えられるわけでもなく、自然と僕たちは知っていた。
「暑いねえ」
幼い僕たちは何度もそう言って、ジュースをのんだ。
お葬式ごっこを思い付いたのも、そういう暑い日だった。
僕と妹は、あの頃、お葬式ごっこに夢中になった。
シンプルな遊びで、まず片方が畳に仰向けになる。
もう一方は最初、遺族役なので、安手のテレビドラマによくあるように、寝ている者のからだに、とりすがって揺さぶる。
いやあ、死なないでっ。死なないでえ。
現実で、死体にむかって、そんな台詞を言う人間は、たぶん存在しないし、存在したとしたら、わざとらしくて、うっとうしいのだけど、なんだか自然と、そんなシーンを、僕たちは無我夢中で演じた。
不思議なもので、こうされると寝ている
方はなんだか後ろ髪をひかれる思いがする。
口のあたりをむずむずと歪めたくなるけど、じっと我慢しなければいけない。
そして、ここからが、いよいよクライマックスだ。
押し入れから掛け布団を一枚出してきて、それを広げて両手でもつと、寝ている者の足元に立ち、先程の遺族役は火葬場の「焼き係役」に変更されて、
そのあと、火の役を演じることになる。
「では」
神妙な声で低くつぶやき、
「ゴオーッ」
という大声とともに、死人の上に布団ごと被さるように落ちるのだ。
火を演じた時の、
狂気的な妹のその声も、
狂気的な僕のその声も、
僕は鮮明に思い出せる。
その姿は、きっと、き、ちがい、そのものだっただろう。
その声が大切で、死人はいくら覚悟していても、その怪獣の吠え声の如き、大声にギョッとなり、にわかに断末魔の気持ちが味わえる。
もちろん、死体役は、燃やされているあいだに、断末魔の声を出さなければいけない。
続いて布団もろとも相手が落ちてくるのだが、布団が日差しを遮るので、目を瞑っていても闇が落ちてくる。
まるで自分がどこかへ転落していくようだった。
ばさり、と、風が一瞬、前髪をもちあげる。
火役は死人が潰れないように注意して四つん這いになるのだけど、それでも布団が被さる瞬間は、体重がかなりまともに寝ている者にかかる。
その衝撃が、死に、とてもふさわしかった。
この遊びをするときは、
もちろん両親が見ていない時である。
僕たちは夢中になって、代わりばんこに畳に横になり、何度でも死んだ。
そそくさと役がらを交代するあいだ、二人とも常に無言で、できるだけ厳粛な雰囲気を出そうとした。
妹は、
知的しょうがいをもっているので、軽い興奮状態から、病的な興奮状態になって、
火の役を止めれなくなったり、
断末魔の叫び声を止めれなくなったりする。
いったん笑うと止まらなくなるのは、
健常者の僕でも同じだけど、
妹のそれは、僕のことを、イライラさせた。
僕の興奮が冷めても、
妹は叫び続けることがあった。
「もう、お葬式ごっこは、おわりだよ。
そろそろ、ママとかパパが帰ってくる」
そう言っても興奮が止まらない妹にたいして、僕は、何を思ったのか、妹の下半身を脱がせた。
いじめたい衝動にかられた。
「ゴオーッ」
それでも興奮状態の妹は、狂気的に叫び続ける。
僕は妹の足を開かせたり、触ったりした。
「うるさいよ、うるさい。
黙らないと痛いことするぞ」
それでも黙らない妹のことを、
僕は誕生日に親から買ってもらったポラロイドカメラで、撮影した。
妹のことを撮影しているとき、
僕は、母と父に殺、される妄想をしていた。
母と父に、
僕が殺、されて、ゴオーッという音と共に、燃やされて、僕は形をなくして、煙になり、何もなくなることを想像したら、
僕は恐怖を感じる反面、不思議な興奮状態になった。
その遊びは、妹と僕だけの秘密である。
あの遊びがどこで終わったのか、
どちらからともなく終わったのか、今となっては思い出せない。

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