あ~イク恋愛生欲情の扉

あ~イク恋愛生欲情の扉

札幌市中央区南5条西5丁目 第2東亜すすきのビル8F | 営業時間:8:30〜23:59

お電話で「スポット見た!」とお伝えください!!

011-563-6919

宝乃ありな の写メ日記PHOTO DIARY 宝乃ありなのプライベートを覗き見! 随時更新中!

2024年 4月 の写メ日記一覧
宝乃ありな

宝乃ありな(26歳)

T160.B90(G).W58.H87

あえいで ゆがむ おじかん です

あえいで ゆがむ おじかん です

ノリコは夜中にトイレに行きたくなって、目が覚めた。
旦那と、小学生になりたての娘のイモコが寝息を立てて、気持ち良さそうに眠っている。
ノリコは音を立てないように布団から静かに這い出た。
身体も頭も眠くて仕方なかったけれど、膀胱だけがトイレの指令を出していた。
おぼつかない足取りで、ときおり壁に手をつきながら廊下を歩く。
そのとき、何気なく開け放してある和室に、ふと目がいった。
棚の上に、おもちゃが置いてあった。
リアルなフィギュアで、ガイコツが鎌をもって黒いマントを羽織っている。
誰のだろう?
娘のではない。
今はじめて見た。
確かに娘は、可愛いお人形さんよりも、そういった怖いものとかを好んだりするし、
甘いものより、からいものを好むような、女の子らしくない、おてんばな性格だけど、
そのガイコツのフィギュアなんて買ってあげた覚えはない。
そんなことをぼんやりと考えながら、
ノリコは寝ぼけながらトイレで用を足した。
寝室に戻る時にもう一度、和室を見た。
当たり前だけどさっきと同じ場所にガイコツがいる。
落ち窪んだ眼窩が、一瞬光ったように見えた。
ノリコは、ぼんやりしながら、そのまま通りすぎて寝室に戻った。
睡魔が勝った。
翌日、お昼過ぎに、マサオが家に来た。
マサオと不、倫を始めて一年が経とうとしている。
ダブル不、倫である。
正直ノリコは、もうマサオにたいして冷めていて、というよりは、最初からマサオにたいして愛情はなく、もう来ないでほしいと思っている。
だから、
「営業ってそんなに時間が自由になるもんなの?」
と、これまでも何度かしたことのある質問を、皮肉をこめてぶつけてみた。
だけど、KYなマサオは、
そんな皮肉とかイヤミに気付くことはなく、
ノリコのことを抱き寄せながら、こう言う。
「だからー、そういうわけじゃないって。
こう見えても結構、大変なんだよ。
忙しい合間をぬって、ノリコに会いに来ているんだよ。
俺のこの気持ちわかんないかなあ?」
「あんまり無理しなくていいよ」
「遠慮すんなよ。
ノリコは強がりだから」
いやいや遠慮してねーよ、察しろよ。
ノリコがポーカーフェイスを装いながら、マサオのことを見つめると、マサオが
「俺のこと好きか?」
と聞いてくる。
「好きだけど、奥さんのことを大切にしてね」
と、当たり障りなく無難な返答をすると、こりゃまたポジティブに捉えてしまう。
ノリコは、うんざりしているのに、ハッキリものを言えずに、流されやすく優柔不断な自分に嫌気がさす。
「昼飯だって食わないで来てるんだから。
ノリコのオムライス食べたいな」
なんだよ、この男と思いながら
「私は、さっき食べたから、お腹すいてない」
と言いながら、話を流した。
体を捧げているのに、しかも不、倫なのに、女が男に昼食をふるまうのは、もってのほかなので
(むしろお前が、ふるまえよと思う)、
ノリコは、マサオが家に来ても、お茶すら出さないと決めている。
旦那だとか娘が私に甘えてくるのは可愛いのに、この男は何から何まで勘にさわる。
甘えた口調も、おねだりも、何から何まで勘にさわる。
その原因は結局「愛情があるかないか」なのだろう。
じゃあ、なぜ愛情がない男と関係をもってしまったのか。
刺激がほしかったからだ。
マサオは高校の時の同級生で、同じマンションに住んでいて、しかも同じ二階の、よりにもよって隣の部屋に住んでいることをノリコが知ったのは、去年の秋だった。
マンションの回覧板を届けに行き、いつもは奥さんが出て来て、旦那の顔なんて見たことなかったけど、その日は旦那が出て来て、その顔を見た瞬間に、
「あーっ!」
と、二人で声をあげて、互いの名前を呼びあった。
二十年ぶりだった。
二十年というのは、二人の関係をぐっと親密なものにしてくれた。
これが五年前だったら、日々の生活やら子育てやらで忙しくて、とてもそれどころじゃなかっただろうし、
これが十年前だったら、ノリコは若くて、趣味もあって退屈せずに幸せだったから、不、倫なんて思考は頭の片隅にもなかったであろう。
二十年の月日が流れたからこそ、始まった関係である。
娘が小学校に入学して、ほっと一息ついたところだったし、結婚十三年目で、旦那との夜の営みもなくなっていた。
だからマサオと関係をもって、最初の三ヶ月くらいは、とても刺激的で楽しかったのだ。
でも今はキスすることすら嫌である。
私が冷めていることを、マサオが察して離れていくならいい。
マサオにたいして執着はないので、それを寂しいとは思わない。
だけど私から関係を切るのは嫌だというよりも、ゴタゴタするのが、めんどくさいという心理かもしれない。
燃え上がっているときに、
ハ、メ撮りもさせてしまった。
とても後悔している。
マサオなら、平気で、それをばらまきそうだ。
だからマサオが私に飽きて、離れていくのを、まつしかない。
こうしてノリコは、今日も流されるがままに、マサオと関係をもった。
マサオの奥さんと私は、ほどほどに仲が良くて、マサオの息子と、私の娘は、とても仲がいい。
娘は、よくお隣に遊びにいく。
「ままーっ、よしおくんの家あそびに行く」
「あ、ちょっと、まってまって。
おやつ用意するから、よしおくんと二人で食べてね」
「うん」
「あっ、そうだ、このガイコツ誰の?
よしおくんの?」
「うん、よしおくんが貸してくれたの」
「あー、そうだったの。
ちゃんと返さなきゃダメよ」
「うん」
ノリコは、おやつを袋にいれ、娘と一緒に、お隣の呼び鈴を鳴らした。
「はーい」
と出てきたヨシオくんのママは、明るい人である。
今日もべティちゃんのエプロンをつけながら明るい笑顔で
「いらっしゃい、ヨシオまっているから、どうぞ入って。
お芋のケーキも作ったから」
と言いながら、娘のことを、家の中に招き入れる。
娘は「わーい、おばさんの作った、お芋のケーキ大好き」と言いながら、
靴を脱いで、たたたっと、家の中に入った。
「いつも、お邪魔して、ごめんね。
これ食べてね」
と、ノリコがお菓子を渡すと、
「あっ、そんなのいいのにー、わざわざ、ありがとう」
と明るい声が返ってきた。
その明るい声を聞きながら、
ほんのりと罪悪感を感じる。
まさか私が、自分の旦那と関係をもっているなんて知らないからこその、明るい声と明るい笑顔だろう。
「じゃあ、よろしくお願いします。
あとで迎えに来るからね」
ノリコは、
ヨシオくんのママに会釈したあとに、
娘に手をふって、その足で夕食の買い物に出掛けた。
八百屋で青菜を買い、肉屋で豚モモ肉の薄切りを三百グラム買い、魚屋でアサリとえぼ鯛の干物を買った。
ふと、乾物屋が目に入った。
たまには、かんぴょう巻きでも作ろうかなと考えた。
娘の大好物である。
娘は子供らしくないものが好きだ。
ひじき煮だとか切り干し大根なども大好物である。
旦那の方がハンバーグとかカレーライスとか、子供が好きそうなものを好む。
「これ、ください」
はいな、と言って、店番のおじいさんが新聞から目を話す。
レジがあるのに大きなそろばんを、はじいている。
「二千百円だね」
ノリコは財布からお金を取り出し、
次の瞬間「ひっ」と声をあげながら、手から百円玉を落としてしまった。
おじいさんが、ありゃー、と言いながら百円をゆっくりとした動作で拾う。
のりこは足がすくんで動けなかった。
まじまじとおじいさんのことを眺める。
おじいさんは、いつもの優しい笑顔のおじいさんだ。
今、お金を渡そうとしたとき、おじいさんから差し出された手が、ガイコツに見えたのだった。
学校の理科室とかによくある人体模型のガイコツ。
五本の白い骨の手が、黒い袖口からお金を受け取ろうとしたように見えた。
ノリコは、鳥肌のたった両腕をさする。
おじいさんは、穏やかな笑顔をノリコに向けている。
着ている服は長袖のポロシャツである。
「まいど、ありがとね」
おじいさんはそう言って、静かに新聞に目を落とした。
いくら目を凝らして、おじいさんを見てみても、おじいさんはおじいさんだ。
私は、ちょっと疲れているのかもしれない。
ぞわっとした気分で、ノリコは帰宅した。
娘がヨシオくんから借りたというガイコツのおもちゃといい、今の見間違いといい………。
霊感なんてこれまで一度だって経験したことはなかったけど、もしかしたら身内に何かがあるのかもしれないとノリコは直感した。
それからもマサオは、週二回ほど、ノリコの家に来た。
触られたらそれなりに気持ちいいけど、もう最初の頃のように体は反応しないし、特に欲しているわけでもない。
分かりやすく説明すると、
家族の毎日の食事を作るように、たとえて言うなら、そんなふうな慣例となっている。
はじめのうちは、はりきって作っていた料理も、いつの間にか同じもののローテーションとなるように、ノリコはマサオにたいして、ほとんどの部分で飽きている。
熱が冷めたあとに残っているのは嫌な感触だけだ。
このうしろ暗さにつけこまれて、こないだのような幻を見てしまったのだ。
そしてそんな幻を見て、バチがあたるかもしれないと考える自分は、案外生真面目な性格なのかもしれない。
ひどく平凡な人生、とノリコは自分のこれまでを思う。
高校を卒業して、実家から通える短大を出て、証券会社に就職した。
そこで知り合った旦那と、ありきたりな恋愛をして結婚をした。
結婚を決めたのは、自分たちがそういう年齢に差し掛かっていたからだ。
旦那以外の男性と結婚していたとしても、自分の立ち位置はなにひとつ変わっていなかっただろうとも思う。
平凡な人生。
自分が辿るであろう、これからの人生を安易に想像できる。
働いている女性たちに恐怖を覚える。
いったいどうして、こんなに速く過ぎてゆく限られた時間のなかで、働くことができるのか。
ノリコの1日は、あっという間に終わる。
朝起きて、旦那と子供を送り出し、掃除や洗濯を済ませているうちに昼になり、新聞を読み始めたと思ったら、娘が学校から帰ってくる。
夕方は瞬時に夜にすりかわり、雑多なことをしているうちに時刻は既に翌日のものとなる。
本当にあっという間なのだ。
子供が出来るまでは、いくつかの習い事をしたこともあったけど、その時だって1日は瞬く間に過ぎていった。
娘が生まれてからは尚更。
そのスピードは、歳を重ねるごとに加速する。
私は、せつなくて、さみしかった。
何かにおびえていた。
だからマサオの出現によって、何かが変わるかもしれないと、ほんの僅かな期待をしたけれど、結局なにも変わらなかった。
むしろ、せつなさと、さみしさと、恐怖は、さらに加速していく。
ある日、ヨシオくんが骨折したと聞いたとき、ノリコの頭にふと、それまでの一連の不気味な不安の影が頭をよぎった。
そして、もしかしたら、このことを暗示していたのかも、と思った。
だから骨折ですんでよかった、骨折したのが、うちの娘じゃなくて良かったなどと一瞬でも思ってしまい、そんな自分のことをひどく勝手だと感じた。
娘を連れて、ヨシオくんのお見舞いに出掛けた。
「お兄ちゃんと喧嘩した拍子に転んじゃって。
今も元気が有り余って、うるさいのよ、この子」
ヨシオくんのママが呆れたような笑顔で言った。
「はやく、イモコちゃんと遊びたいよ」
「うん、わたしも、早くヨシオくんと遊びたい」
娘とヨシオくんが、イチャつき始めた。
「わたし、これもってきたんだ」
そう言って娘が取り出したのは、ガイコツのフィギュアだった。
ノリコは「そんなもの」と言いかけて、ヨシオくんから借りたものだと思い出して、口をつぐんだ。
ヨシオくんが
「おっ、シニガミンじゃん」
と言いながらげらげら笑う。
「誰か死んだりした?」
続けてヨシオくんが、ふざけて、そう言って、
ヨシオくんのママが「こーら、縁起でもないこと言うな」と言いながら、ヨシオくんのことを、デコピンした。
明るい親子である。
「じゃあね、早く元気になってね」
とノリコと娘が病室から出ようとしたところで、ちょうどマサオが来た。
ノリコとマサオは、お互いにポーカーフェイスを装いながら、
「あっ、こんにちは、いつもお世話になっています」
と挨拶をする。
そのあと喉が乾いたという娘に、一階の売店でジュースを買って、待合室の長椅子に座った。
「まま、おやつ食べたい」
娘が甘えた声を出す。
売店のお菓子を見ていたら、欲しくなったのだろう。
夕飯までにはまだ時間があるし、
「いいよ。ひとりで買いに行ける?」と聞いたら、
「うんっ。ママ、ここから見ていて」と元気に言う。
「ひとつだけだよ」と言いながら300円を渡した。
売店に入った娘が何度も、こちらを振り返る。
ノリコが座っている椅子からは、売店の様子がよく見える。
娘は迷ったあげく、箱入りのスナック菓子に決めたらしい。
箱を掲げてノリコに見せてくる。
ノリコは笑顔で頷く。
戻ってきた娘は「買えたよ」と誇らしげな表情で言いながら、お釣りを渡してきた。
「はい、よくできました」
娘は嬉しそうにお菓子を食べている。
「ママ、お腹痛いの?
それとも、お腹すいたの?
おやつ、あげようか?」
と娘が聞いてくる。
さっきからノリコが下腹部を撫でているからであろう。
「痛くないよ(笑)」
と答えながら、おやつを、ひとつもらった。
だけど手の位置はすぐに元の位置に戻ってしまう。
妊、娠検査薬を使ったら陽性だった。
生むと決めている。
旦那とマサオの血液型は同じだし、どちらにしたって、自分の子供には違いないのだから、生まない選択は絶対に、ない。
まだ検査薬で調べただけだから、明日ちゃんと産婦人科に行こう。
その日の夜、夢の中でガイコツが立っていた。
ガイコツは「お呼びがきたよ」そう言いながら、鎌をゆっくりと持ち上げて、楽しそうに鎌を振り下ろした。
汗びっしょりで目が覚めた。
嫌な夢だった。
娘が死んだのは、それから二日後だった。
学校帰りに、車にひかれた。
ノリコが産婦人科で「妊、娠しています」と言われ、家に帰って来たときに、警、察から電話があったのだ。
娘は意識が戻らないまま三日が過ぎて、そのまま帰らぬ人となった。
ヨシオくんは、わあわあと声をあげて泣いてくれた。
ヨシオくんのママは、ノリコの肩を抱きながら慰めてくれた。
「どんな言葉をかけていいかわからないけど」
そう言うヨシオくんのママに、
「そのお気持ちだけで、じゅうぶんです」
と答える。
ヨシオくんのママは、いつもと変わらない優しい表情のままで、
すれ違いざまに、暗いとも明るいとも言えない独特の声のトーンで、こう言った。
「因果ですよ」

一覧に戻る
スポットナビ
スポットナビ